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「あ…えっと…よろしくお願いします。」
そう最初に声を発したのは後ろを向いて来た男だった。
大きな黄土色の瞳を揺らしながら言っている姿はとりあえず発してみた感がありありと滲み出ている。
気弱そうでは無いのだが、初対面というのを気にしているのかもしれない。
こういう時だからこそ落ち着きはらっている透が行くべきなのだろうが、生憎、透はコミュニケーションが大の苦手だった。
暫く考えて透が発した言葉は、
「とりあえず、名前。」
だった。
目の前の男は最初何を言われたか理解できなかったようだが、だんだんと慌てた様子になっていく。
これもなかなか面白いものだと無表情に眺め続けていると、男が口を開いた。
「ごめん。俺、宝城 裕〈ほうじょう ゆう〉。」
宝城 裕。
その名前を頭の中で転がす。
「俺は咲坂 透。よろしく。」
そう言って手を差し出すと、宝城も「こちらこそ」と笑顔で手を握り返してくれた。
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