第一章

7/22
前へ
/26ページ
次へ
ふと興味を持ったのが宝城の笑顔だった。 ふわりとした笑い方は人を惹きつける魅力があって、単純に優しい奴なのだろうなと推測。 もう少し話したい気分になった透はこちらから話題を振ってみることにした。 「そういえば、宝城の精霊は何属性だ?」 閑話休題。 精霊には力があると述べたが、それには属性がある。 火、水、雷、風、植物、地、時空、治癒、闇。 闇については100年前に絶滅したと言われている。 それら9の中の属性の精霊の加護を受けた人間が精霊の力を得、練習して行く中で自由自在に操ることができるようになるのだ。 閑話休題終了。 しかし、すぐに答えは返ってくることはなく、気づけば宝城は冷や汗を掻きながら戸惑いの表情を浮かべていた。 「どうした?」 怪訝に眉を顰めた透に対し、宝城は尚も戸惑いの表情を見せ続けたが、それは何か言うのを躊躇っているようだった。 これは聞いてはダメなことだったかと考えていると、宝城から声が聞こえてきた。 「…俺、精霊の力使えないんだ。」 一瞬何を言われたか判断し兼ねて、しかし理解すると自分でもわかるくらいに目を見開いていた。 「な、何で?」 「わかんない。でも、精霊の加護を受けているのかも怪しいよ。」 そう言って宝城は苦笑する。 それこそあり得ないことだ。 何故なら、必ず契約しなければいけないからだ。 本格的に契約するのは、ある程度知識を得た頃の小学校卒業前日。 「あり得ない。それは、絶対に。」 透のその言葉にも表情を変えない。 「でも、本当なんだ。俺が小学校の時、みんなと同じように精霊召喚陣を描いても、何故か反発を起こしてしまって精霊すらも見ることができなかった。」 精霊召喚陣とは、その名の通り精霊を召喚する陣のことだ。 これの役割は自分にあった属性の精霊を選ぶこともそうだが、何より精霊を視認することができるように人間が自ら行うことができる優れものだ。 「陣の描き間違えではないのか?」 それにも宝城は首を振る。 「小学校の時の担任にも見てもらったから、間違えない。」 これは前代未聞の出来事だ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加