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咲坂 透〈さきざか とおる〉は一つため息を吐いた。
目の前にはいまや開門されている大きくて豪華な門。
その中には広い敷地とこれまた大きな城のような建物。
その周りを囲う石垣には大きな看板が立てかけられていた。
『第56回入学式』
そう。
今日は晴れて中学生が高校生になるために必要不可欠な式が行われる絶大イベントなのだ。
そんな晴れやかな空の下、門の前で浮かない顔をした新入生が1人。
漆黒の瞳に漆黒の髪。サラサラそうな髪は風によって少し靡く。
大きな目は不釣り合いに釣りあがっていて少し気が強そうな印象を受ける。
そして、端正な顔立ちは中性的で背も合間ってか制服が男性用でなければ、少女に間違われるところだろう。
そんな彼は笑顔で元気に登校して来る新入生たちを横目に、大きく息を吸うと気持ちを切り替えるように勢いよく吐き出した。
「よし!」
彼は大きく足を踏み出す。
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