第一章

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千人ほど集まった講堂に一人の女生徒がステージに立った。スレンダーな体型だが、女子の割りには背が高い。自然と注目が集まるのは年齢不相応の大人びた雰囲気からだろうか。視線をさ迷わせること数秒、口火を切った。 「一年生の諸君、一先ず入学おめでとう。私は生徒会長のスタンローガン・フィリアだ。手短に話をしよう。この学園は一切妥協を許さない。……励めよ。」 凛とした声から発せられた言葉に少し講堂がざわめいた。しかし、ざわめいているのは入学したての一年生の所だけ、在校生は慣れたことなのか口許が弛む生徒がちらほらといるのみで黙って話を聞いていた。 ******** 「フィリア君」 先ほどまで壇上で極めて短い挨拶をした生徒会長を背後から呼び止める。呼び止められた側は相手に気づかれないように小さくため息を吐くと振り返った。 「何でしょう学園長?私は急いでいるのですが?」 学園長はそんな彼女の素振りを気にもせず話続けた。 「相変わらず愛想が悪いの。しかし随分と楽しそうな顔をしておる。はて……あぁ、そうか。今日はパートナー決めであったな。」 自分はそんなに顔に出てるかと顔をふにふにしてみる。 「ホッホッホッ。フィリア君。君は無表情だと思っているかもしれないが、わかる人には分かるもんじゃよ。」 それだけ言うとフィリアの肩をポンと叩き消えた。恐らく転移魔法だろう。 確かに今日は二年生に進級してのパートナー決めがある。パートナーとは今後卒業するまでの二年間を共にする相手の事でギルドや実技のテスト、寮の部屋まで一緒になる。 一番重要となる相手の選び方は、「選択の紙」と呼ばれる紙に魔力を注ぐ事で、その紙が一年時の学校生活、成績、本人の性格とあらゆることまで読み取り、学園内で最適のパートナーの名前を表示する。 だから相手が異性であったり同性であったり極論を言えば嫌いな奴だったりする。因みに「選択の紙」は絶対なのでパートナーを変える事は出来ない。  誰もいなくなった廊下でフィリアは呟いた。 「結局あのじーちゃんは何で呼び止めたんだ?」
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