two.

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 そんなある日。  立派な服を着て、立派な馬をつれた男たちが10人ほど私のもとを訪れた。昔はなかった服装に、私はああ時代はかわっていくのかと一人思った。  あなたが森に住む姫ですかと男は聞いた。  私は否定しようとして、できなかった。姫などとは、と笑ってしまったが、自分が人間だと思うのは、ずっと昔にやめたことだ。 ならば、弟がかつて村だったこの場所を去る直前に言った言葉を、私が村を失ったとき最後に聞いた少年の言葉を、自分の存在証明にするのが一番だと思えた。私が神のこどもならば、姫と呼ばれてもおかしくはないのではないかと思った。  聞けば立派な服を来た男たちは王室の使いだという。  王室がなんのようだと訝しげに尋ねると、男たちは互いに顔を見合わせると、こういった。 「わが王があなたさまを妻に迎えたいと申しておりまして」  もちろん私は驚き、戸惑った。自分が誰かの妻になるなどという幻想は、まだこどもと呼ばれる歳だったときに捨てていた。  とりあえず一度城へ来てはいかがですかといわれ、私はつい頷いてしまった。
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