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心から夫が愛しく思えた。泣き出した私に夫がうろたえるのがわかった。ああ愛しい。どうしようもなく、この人が愛しい。
「あなたが愛しい。だから、あなたのために私は死にたい。どうかあなたに見届けて欲しい」
いつ訪れるのかわからない、私の死を。
「ふざけるな、そんなこと、私が許さない。そんなこと二度というな」
夫は怒りながらみっともなく泣いた。
罵声が飛び交う中、夫は国民に講義した。そんな日々が続き、ついに夫は倒れた。
薬の知識には自信があったから、夫の看病は私がするといったが、夫が倒れた以上、私を弁護する人はいなかった。息子と私は城の中ではれものにふれるような扱いを受けていた。ふいにあの、隔離されて離れで生きていたときを思い出した。
そんなときだ。夫の弟である男が一人の預言者をつれて城にやってきた。
預言者は私を見るなり、息を呑んだ。そして、いつか占い師がそうしたように転がるように私の目の前に跪くと、何かを祈るように額に私の手を押し付けた。
それからすぐに国会を集めて欲しいというと、夫の弟は迅速に集めた。そして、ざわめきとどよめきの中、預言者は私を指差して言った。
「彼女を王にすべきだ。この国が滅びるまで見届ける場を捧げよ」
預言者は昔の占い師と同様、王族とは別個の部分で神聖視されていた。
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