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私は恨みはしなかった。勝手に深い森に侵入し私の家を訪れて突然結婚を申し込んできたのは夫なのだし、殺してくれと願ったのを怒って生かしたのも夫だった。だから、私に夫を恨む権利はきっとあったのだろう。
それでも恨めなかった。確かに私は夫を愛していた。私が王座につき夫が私を見なくなる前に、夫がくれた日々は宝物だった。あの深い森にいては絶対に味わえない幸せだった。
だから私はこういった。
「私はあなたに迎えてもらって嬉しい。あなたに出会えて、こうしてあなたの最期に付き添えることを決して不幸だとは思わない。あなたが私を呪っても、私はあなたを愛しているの」
本当は王妃になりたかったわけではないし、王座などほしくないのよ、とはいえなかった。
それは、いつになるかわからない私の死までとっておくべきだと思った。
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