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息子に子供が出来た。だが、息子の子供、つまり孫もまた、私につくすために生まれたのだと人は謡う。
違うのだ。そうではないのだ、と叫んで反対したくなる。
孫のようだといって頬を撫でた、遠い日の母を思い出した。
みなが私を様づけして、私よりも年上のような容姿をしている息子も私に頭を垂れる。
笑顔。信頼。富。権力。その王座にはそんなものがたくさんあった。だけど、私はそれがちっとも嬉しくなかった。
誰も私に触れない。私を愛してくれない。王座にがんがらじめに縛り付けられた私のイスを、みな持ち上げるだけで私の目の前には立ってくれない。
息子が歳をくって、政治のあれこれをして完璧に私の部下のようになってくると、私はいよいよ一人ぼっちだった。
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