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私は王をやめるから、王座はあなたがつきなさいと息子にこぼしたことがあった。
だけど息子はうすっぺらい笑みを浮かべて、
「わたくしにあなたの代わりなど無理です。その王座はあなたしか受け付けないでしょう」
といった。ずうっと昔、まだ私が幸せだったころ、腕に抱かれた息子がきゃっきゃと声をあげて笑っていたのを思い出す。ああ、なんて。なんて、悲しいのだろう。
孫に触れられる日も来ない。もうあのあまやかなにおいをかぐことはできないのだ。
いだずらに齢をかさね、知識ばかりが増え、しかも見目が変わらないものだからみな私を神と勘違いしているのではないかと時々思った。
触れてはならないものだと勘違いしている。それなら、異端審問にかけられ処罰されるほうがまだましだと思えた。
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