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悲劇が起きた。
いや、悲劇ではない。
世界を終わらせる、天変地異だった。
大地震がおき、大地はひび割れ人々は死に、大洪水がおき、大嵐が続いた。
人々は混沌に溺れ、たくさんたくさん私に答えを求めた。
だけど私は神の子ではなかった。
歳をとらないだけの、ただの人の子だった。
「あなたが愛する人を、死ぬほど愛しなさい。世界はきっと終わる」
どんな人間にも同じ答えを渡した。絶望したものもいれば、激昂して襲い掛かってきたものもいる。
けれど私は繰り返した。悔いなく愛せと、願って。
すぐそこまで、津波が迫っているという情報がはいった。たくさんの人が、愛する家族のもとへ、水を恐れて高い山々へと移り、城はもぬけの殻に近かった。
ほら、私を愛してくれる人など誰もいなかった。悲しいはずの状況が、おかしく思えてしょうがない。
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