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「怖くはない。むしろ、安心しているよ。ようやく私も死ねるのだからね」
ゴゴゴ、と遠くで世界が終わる音がする。
やがてこの城も波に飲まれ、私は死ぬだろう。世界は終わり、そしていつかまた新しく生まれるのだ。
そのときに私はいない。いらない。もう、取り残されて生きるのはまっぴらだった。
「本当なの?」
ぼそっと、独り言のように彼女がつぶやいた。
「私には、あなたが100を越えるなんて信じられない。だって、あなたはまるで私の姉妹みたいなんだもの……」
目を細めて、小さく首を傾げる。私と比べると随分血色のいい肌。目は夫の目とそっくりなグリーン。
私とあなたが姉妹なら、私は月であなたは太陽ね、と言いたくなって、やめた。そんなものはこっけいな御伽噺のようで、絶対にありえない仮定であるから。
「おまえさまは怖くないの」
話をかえるように尋ねると、彼女は少しだけ顔を俯けてぎゅっとドレスの裾を握った。
「怖いけど、でも……逃げてもどうせ、世界は終わるんでしょう?」
「生きたいって、思わないの?」
口元が微笑んでいる自分に気がついていた。楽しいのだ。自分になんとなく似た、自分の血が少しはいっている太陽のような彼女と会話することが、とても楽しい。
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