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少しだけエロゲをやって妹キャラ攻略してから寝て、翌日。10時に目覚め、カップラーメンを食べてからバイトへ向かった。
決して大きくはない個人経営の定食屋で時給は安いが、賄いが充実してるのと店長夫婦の人柄が良い。ビバ、定食屋。
11時少し前に到着して、朝ご飯は食べてきた? と奥さんに聞かれる。食べてきました、と答えたら、なら晩御飯に持っていきな、と、サンドイッチをくれた。……優し過ぎて泣けてきた。
フロアの制服に着替えオープン前の店に出る。
「目の下に隈があるな。またえろげってやつか?」
厨房に立つ店主に聞かれ、大してかっこよくない帽子を深く被り直し、目元を隠した。
「いえ、実は……妹が、急病で」
あながち嘘では無い。昨日のエロゲがそういう展開だった。
「ほお。妹が。それは大変だな。大丈夫なのか?」
あ、やばい本気にされた。店主は冗談が通じないのだ。
「アナタ。上島君が言ってるのはゲームの設定の話ですよ」
あ、やばい見抜かれた。どっちかというとこっちのほうがやばい。流石奥さんだ。
「ゲームのやり過ぎは身体に悪いぞ、宏大」
やばい、優し過ぎて胸が痛い。ただでさえ家に置いてきた人工知能プログラムが心配だっていうのに。
「でも、お仕事はお仕事で頑張ってね」
奥さんはシワを寄せて笑った。
はい、と返事をした所でもう1人のバイトが入ってきて、その日の営業が始まった。
◇◆◇◆◇
終わったのは、夜の8時だ。酒があまり豊富じゃないからか、夜の引きは早い。
制服から私服に着替えると、携帯に池田からの不在着信が来ている事に気付いた。
確かめながら店を出て、そういえば人工知能プログラムを使った悪戯について言及しようと昨日かけていたな、と思い出し、かけ直す。
池田はすぐ電話に出た。
『おー、わりぃな上島。昨日バイトの後にも飲み会が入っちまってさぁ、電話あったの気付かんかったわ。んで、どしたん?』
いつもと変わらない調子の池田。
「どしたん? じゃない。お前、人工知能プログラムを弄って部室から出しただろう」
それでプログラムに何かあったらどうするんだ、と問い質すと、しかし電話越しの池田は素っ頓狂な声を出す。
『――何を言ってやがる。俺がんな事するわけねぇだろ』
と。
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