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大学のサークル棟。その最奥の部屋にて。
「サーバーを用意し、そのサーバーにデータを蓄積するようにすれば、容量は賄えるけど……。それだと電波の送受信にタイムラグが生じるわけだ」
今更の提案を今更の理由で自ら拒むと、対面して座る男が脱力した。
「一応接続出来るようにはしたが、そんじゃあ意味ねぇよなぁ。受け答えに時間差があっちゃあ人間味が無くなっちまうし」
脳科学と機械工学を両立で専攻している俺と、心理学を専攻している彼、池田雅史(いけだまさし)の2人だけのサークル。
話し合っているのは、人工知能プログラム及び人工感情についてだ。
「しかしな池田。エロゲの主人公は何分何時間、返答を渋ってもちゃんと人間扱いされるだろ」
もう1度言うが、人工感情についてだ。
「しかしなぁ上島(かみしま)。それは相手がよー、二次元じゃなきゃ駄目なんだよ」
「……ですよねー」
ご覧の通り、行き詰まっている。
既存の科学では、何をどう応用しても人工感情は作れない。新しい理論や装置が無ければならないのだが、
「プログラムの言動の選択肢についてはエロゲと繋げば――」「いいわけねぇだろ科学者もどき」
酷い言われようだった。
「エロゲの選択肢と繋いだらその人工感情の持ち主はどうなるよ」
池田に言われ、少し考えてみた。
「――そんな事があってたまるかハレンチ野郎!!」
「言い出したのはお前だぞ上島」
しまった取り乱してしまった。
気付いたら立ち上がっていた俺は咳ばらいをして、気を取り直して椅子に座る。
若干だが平均値を下回る俺の体重にギシッと鳴ぐらいだから、この椅子もそろそろ買い替えが必要だろうか。家にあるエロゲはエロ控えめのやつに買い替えが必要だが。
「自らの言動をパターン化すれば30テラバイトぐらいで事足りる。しかし、受ける言動を識別するためには倍以上掛かるだろう」
Aと言われればAと答える。それだけでは人間味に欠けてしまう。Bの状況でAと言われればCと答えるのに、Dの状況ならばEと答える。
人間の感情や選択の在り方は、常に一定とは限らない。というのは、心理学云々以前の話だ。
それらをどこまでも追求してしまうと、スーパーコンピューター並の容量が必要になる。
確実に、人サイズのハードディスクでは収まらない。
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