電波受信しちゃう居候

5/10
前へ
/10ページ
次へ
 そういうわけで、徒歩で住宅街を抜け大通りに出て、商店街を突っ切ろうとした。しかし途中で目に入った『カップラーメンセール』という文字に思わず立ち止まり、品数が残り少なくなってるのを見て、漁ってしまった。カップラーメンなら家にたんまりあるのに……。  いや、これは無駄遣いじゃない。未来への出資だ! 来月の仕送りが入ったら今買ったカップラーメンの分だけ生活がラクになる! でもそれまでどうしよう! やばい!  今月最大の無駄遣い(3割引カップラーメン5つ)を悔やみながら商店街を抜けた所で、ブチッ、と、足元から嫌な音がした。 「…………」  恐る恐る下を見る。 「うそ……、だろ……?」  それはあまりに、信じがたいものだった。  まさか、まさか…………靴紐が、切れるなんて……っ。 「2000円したのに! 2000円したのに!」  人目なんて気にしていられない。俺はその悲劇を憂いた。 「世界はなんて残酷なんだ。実験には失敗するし無駄遣いしちゃうし(結論として無駄遣い扱いになった)その上靴まで失うなんて!」  なんだか視線が集まってる気がした。多分気のせいだ。  仕方ないから靴屋へ寄った。俺にとってはどれも高値で手が出せない。店主に値切りをしてみたけど、値切っても手が出せなかった。金も無ければ希望も無い、とはよく言ったものだ(主にエロゲで)。  紐が切れた靴のまま帰ろうとしたら店主がお下がりをくれた。その優しさに感涙し、世界は希望に満ちていると知った。  それにしても。  高校までの俺だったら、靴紐が切れて絶望して、靴を貰って感動なんてしなかっただろう。  池田や坂井と出会ってから、多分結構、感情ってやつを理解出来てきたと思う。バイト中にはイライラして、叱られたら悲しくなって、ふざけていたら楽しくなる。  単純で、だからこそ奥が深く、難しい。 「感情……か」  ここだけの話、人工感情なんて作れないのでは、と、最近思っている。完全に手詰まりだし、自分で書いたレポートを読み直して、あまりのオーバーテクノロジーに笑ってしまった事もあった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加