電波受信しちゃう居候

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 商店街を抜け、大通りから外れた長い坂道を登りながら、夕日を浴びてアンニュイな気分になっていた。  ちなみにここK市は盆地に出来た街だ。凹みの角度とその広さから、K市のKはクレーターのKだ、と坂井が言っていた。ちなみにクレーターの頭文字はCだ(crater)。  クレーターの中心には歓楽街があり、それを囲うように住宅街がある(大学はその住宅街の中にある)。そしてそこから広がるように商店街などの買物施設の多いエリアが囲っている。そこから外はクレーターの外堀だ。  クレーターの外堀は急な坂道になっているせいで、建物は少ない。その分土地は安くなっていて、豪勢な別荘地があったり、逆に立地条件が悪過ぎて、目を疑ってしまう程安いアパートがあったりする。  俺の家があるのは外堀だ。当然、安いアパートのほうだが。  靴さえ満足に買えない貧乏学生が借りられるアパート。立地条件の悪さは折り紙付きで、暑さが緩まってきた晩夏この頃でも汗だくになる坂道が続く。  人通りはおそらく、このK市で最も少ないエリアだろう。大学に進学して3年経っても、この坂道はきつい。そこで俺はすごくハァハァしながら歩いていた。  その時だった。 「ご主人様」  後ろから、次元がひとつ違う所でしか聞いた事の無い単語が聞こえた。  確かに、別荘地辺りにならそう呼ばれる人と呼ぶ人が居るんじゃないか、と思った事もあった。しかし、ここは貧乏人が集まるエリアだ。  俺はアンバランス過ぎるその発信源を確かめるべく、振り向く。 「っ!?」  吸い込んだ酸素が喉に詰まった。  黒い髪。ツインテール。色素の薄い瞳。不健康にも見える白い肌。  そんな少女がそこに居た。  いや、違う。  そんな少女が、そこに在った。  降り注ぐ斜陽が熱気と共に気味悪さを蔓延させる。外に居るはずなのに風が無いせいか、それは俺の周りにだけ纏わり付いて、離れない。 「ご主人様」  もう1度、ソレは言って小首を傾げた。  人間らしさの欠ける無表情だが、それを補うような仕種。  人工知能プログラム及び人工感情を植え込んだ人形。  ソレは、サークルの部屋に置いてきたその姿、そのままだった。
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