電波受信しちゃう居候

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 夏休み中に散らず取り残された蝉達がうるさい。高鳴る心臓は今にも張り裂けそうで、その息苦しさが余計に体温を上げていく。  わけが解らない。人工感情の実験は失敗したはずだ。にも拘わらず、 「なん、で……」  それは、不意に出た無意識の疑問だった。 「なんで、とは、何に対する質問でしょうか。主語と述語を要求します」  機械的で冷たくも思える返しは、人間味云々についてを置いておけば完璧だった。確かに、なんで、とだけ聞かれたら理解は出来ない。  理解出来なかった事において、機械ならば対応出来ないだろう。しかし、理解出来なかった原因を突き詰め、それを解決しようとするのは、機械には難しい。  だから俺は、問われた事に答えなければならない。 「そ、の……な、なん……  口が上手く回らない。舌の中に伸びきった輪ゴムがあって、上下から引っ張ってるみたいに動かない。  深呼吸をすれば収まるかと思ったが、意味は無かった。仕方ないから動かし難い舌のまま答えた。 「なんで、……ご、ご主人様、なんだ……?」  不意に無意識の疑問そこ? とは自分でも思ったさ。でも俺だって混乱してるんだ。許してくれ。 「ご主人様はご主人様だからでございます。ご不満がありましたら呼び方を変更致しますが?」  事務的に、もしくは機械的にソレは答えた。  ちなみにソレは白いワンピースを身に纏わっていて、池田のお下がりズボンとシャツを着せていただけの部室とは服装が変わっていた。誰かが着替えさせたのだろうか。 「不満、というわけではないが、ご主人様と呼ばれる謂われは無い。何か別のにしてくれ」  もしかしたらあの後、実は実験は成功していたと知った池田が着替えさせて、俺を驚かせようとしているのかもしれない。  池田に審議を問うべく、ズボンのポケットから携帯電話を取り出した。ちなみに未だ旧式だ。iPhoneに変える金が無いからな。 「では、なんとお呼びしましょうか」 「なんでもいい」 「畏まりました。お兄様」 「それは絶対に止めてくれ」  俺は普通の汗と冷や汗が混じった嫌過ぎる汗をシャツの袖で拭いながら、池田に通話を繋げた。
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