電波受信しちゃう居候

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 しかし、池田は通話に出なかった。バイトだろうか。相談無しで勝手に外に運び出しておきながら、ちゃんと見張らないとかどういう了見だ。  念のため坂井にも連絡を取ろうとしたが、彼女は最近家の手伝いが多くなってきたとかで、大学にも顔を出していない。  そしてやはり、忙しいであろう坂井は電話に出なかった。  俺は携帯電話をポケットに入れ直して、ソレと向き合う。  ソレは未だに、なんとお呼びすればいいかと尋ねてきている。相手は機械なのだから、返事をしなければ無限ループするのも仕方ないが、俺は機械じゃないから無限ループはさせない。 「……上島で頼む」  ああ、小心者だな、という自覚はあった。機械相手に遠慮して苗字かよ。せめて下の名前にしろよ、と思いながらも、この姿の少女もどきに下の名前を呼ばれる事へは抵抗があり、訂正出来ない自分が居た。 「かしこまりました。上島」 「え、いきなり呼び捨て?」  さっきまでご主人様とかお兄様とかだったのに、さんとかくんとかをすっ飛ばして友好度アップはいくつかのステップが足りていない気がする。 「ご不満がありましたら呼び方を変更致しますが?」  やはり機械的な口調でソレは言う。  俺は少し考えてみて、相手は機械なのだから、呼び方なんてどうでもよくね? と思い至り、そのままで良い、と返した。  だが、これからどうすべきだ? 部室に片付けるため1回大学に戻るか? それはかなり面倒だ。しかし今日は金曜で、明日明後日は土日で大学は休みだ。なんかのついでに確認するとしたら3日後の月曜になる。 「……仕方ない。ウチに来い」  俺の今の住家は正直かなり狭いから、こう大きい荷物は置いておきたくないんだけどな。一応非常事態だ。  というか人工感情は希薄といえど人工知能プログラムはしっかり作動しているようにも見えるし、どれくらいしっかりしているかも確認したかった。  ソレは人間と違い無い調子で小さく頷くと、 「かしこまりました。上島」  と、機械的に答えた。
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