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全身の力が抜ける。
膝がカクンと自然に折れて地面に両膝をついた。
「じゃ。」
桐原くんはすっと片手をあげて、背を向け、校門の方に歩き出す。
二度と、私に見向きもせずに。
犯人が、桐原くん…。
犯人を絶対に殺してやる、と思っていたはずなのに、
いざ目の前にして、私は何も出来なかった。
殺す価値ない、と彼は言った。
また私の大事な人が死ぬ、という桐原くんの言葉に怯えて、誰かにこのことを言うことさえ私はできないだろう。
たしかにそうなのかもしれない。
私には何の価値も…。
平和ボケした私たちは、これからも普通に幸せな日々が続くと、信じていた。
ガラガラと私の中にあった全てのものが崩れていくような気がした。
何を根拠にそんなことを信じていたの?
私の周りの世界はとっくに壊れていたのに。
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