2、標的

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それは桐原くんのことだ。 この街で起こっている連続殺人の犯人が桐原くんではないと言い切れない。 あの目、簡単に動物や人を殺せる人間…。 そんな人間は、この間まで平和すぎたこの街にはそう多くはいないだろう。 むしろ桐原くんであると考えたほうが正しいかもしれない。 それに加えて、希楽は桐原くんに恋をしている。 なおさら彼を殺人犯だなんて疑うことはないだろう。 例えば、夜中に彼と会ったって警戒せずに喜んでついていってしまうに違いない。 そう考えると身震いがした。 「…どうしたの春夢?さっきから変だよ?顔色も悪いし…」 「ほんとに何でもないから、大丈夫だよ…」 希楽には何もかも悟られるわけにはいかない。 希楽は頭がいいし、観察眼にも優れている。だから、ボロを出さないように…。 それが、桐原くんから希楽自身を守ることになるんだと、そう信じることしか私には出来ないんだから。
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