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気付かない方がよかったのかもしれない。
長く付き合ってきた友達だから、自分に似た感性を持つのは当たり前かもしれないけど、まさか――だなんて。
尚樹の郁斗への感情は前から気づいていたが、まさか悠希までとは。
悠希は確かにゲイビにも参加するほどだからそういう趣味があるのだとは判っていたことだ、しかし郁斗のことが…だなんて。悠希は郁斗じゃなくても大丈夫なくせに。寧ろ相手なんて誰でも良くて、ちゃんとした恋愛なんてするはずないとまで思ってた。
「悠希、昴、ちょっといい…?」
尚樹がいつもの笑顔を消して真剣な目で俺と悠希を呼んだ。
きっと尚樹も気づいたのだろう。
「昴が郁斗を好きなのはずっと知ってたよ、けどまさか悠希までとは思ってなかったから…」
まさに同じ意見だった。
「えー?俺だってずっといっちゃんのこと好きだったってー!ていうかお前らもそうだったの?」
「「いっちゃん…?」」
こいつ…郁斗のこといっちゃんって呼んでんのか…馴れ馴れしい…。
「え、逆にいっちゃんって呼ばないの?」
「僕のことナオちゃんて呼ぶのと一緒…?」
尚樹、ナオちゃんて呼ばれてんの…?
「いっちゃんの方が特別に決まってんじゃん」
「あ、なんかちょっとムカついたんだけど」
俺…“昴”だな…。
「何話してるのー?」
「郁斗!?」
「いっちゃん!!」
元々何話してたかわからなくなってカオス状態だった時、まさかの郁斗本人登場…。
これはまずい…。
「なんだよー、最近三人で仲良くしちゃってさ。イジメなの?」
「それは断じて違うよ!」
「寧ろ俺達みんないっちゃんのこと愛してるしv」
「「悠希!!」」
「ほんと?嫌われちゃったかと思ったー、一番収入少ないし…」
そんなことで嫌うはずないのに…、すげー可愛い、写真撮りたい…。
「尚樹、今日の夕飯何?」
「郁斗は何が食べたい?」
「えっと…」
「スッポン鍋!精力付けないと。明日仕事あるんだよなー」
「悠希の意見は聞いてないよ」
「スッポンはちょっと怖いから嫌だけどお鍋はいいかも」
「じゃあお鍋しよっか」
尚樹の表情が人によってコロコロ変わってなんかやだ。
そっか、尚樹が笑顔なイメージなのは郁斗を見てる時だけだ、そんだけ郁斗を見てるってことか…。
「じゃあ買い物行こっか、郁斗」
「俺も行く…」
「昴も行くの?じゃあ俺も!」
「悠希は留守番してろ」
郁斗とデートなんてさせるかよ。
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