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鍋の材料を買って帰ると悠希が熱烈な出迎えをしてくれた。
「おっかえりー!遅かったじゃん!一人寂しくお留守番とかまじ大変だからね?当番制でお留守番決めようよ!」
「悠希はずっとお留守番係ね」
「当番制って言ってんじゃん!」
「ほら、一番体力要る人を出歩かせるほど鬼じゃないから、俺も尚樹も」
サラっと流して野菜ばかりの買物袋を悠希に任せると、文句を言いながらもちゃんと持ってキッチンまでついて来た。
「悠希も買い物行きたいよね、お留守番やだよね。じゃあ俺と悠希で交代制にしよ?」
「いっちゃん優しいー!!でも俺いっちゃんと買い物行きたいなぁ」
「そっか、じゃあお留守番制度なくそう?みんなで買い物行けばいいじゃん」
天使の笑顔の郁斗…写真に収めたい気持ちはいっぱいだが、悠希に向けられた笑顔なのがムカつく。
「よし!じゃあ僕お鍋の準備するから昴はもういいよ、ありがとね」
「いや、邪魔して悪かった」
買物袋を冷蔵庫の前に置いて、郁斗にセクハラをかまそうとしてる悠希を絞めてから自室に戻った。
悠希は明日仕事があると言っていたが、俺も仕事があるのだ。
仕事は選んでいられないが、少し苦手なグラビアアイドルの撮影。
撮影している間は無心にシャッターを押し続ければいいのだが、苦手なのはそのあとの打ち上げだ。
酒癖の悪いアイドルが多くて困る。
襲われかけたときは死ぬ気で逃げた。
郁斗達と一緒に住む前だから、自宅へ帰っても安心はできなかった。
今は郁斗や尚樹が保護してくれるからいいのだが、一人暮らしの時は寂しく頃合いまで耐えるしかなかった。
悠希は「襲われればいいのに!巨乳だろ!?」と反論してくるから役に立たない。
溜息をついて、カメラのメンテナンスをしていたら出汁の香りが漂ってきた。
「昴ーご飯だよー」
片付けているとちょうどいいタイミングで郁斗の声がした。
憂鬱な仕事も郁斗の為と思えば頑張れる、そう自分に暗示をかけた。
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