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最悪だ。
午前中にクライアントとの打ち合わせを終え、午後は比較的のんびり仕事が出来るはずだった。
昼飯も済ませたし、とりあえず一服しようと喫煙所に向かっていた最中。
「藤森」
「はい?」
前から歩いて来た部長が鍵をぶらりと右手に垂らしたまま近づいてきた。
「社内コンクールの担当してたよな?」
「は?…ああ、あれですか」
以前、会社のイメージキャラクターのアイディアを社員に募集するとかいう企画に、俺も携わった覚えがある。
全社員に募集をかけたが、提出したのは企画部の何人かと他部署の申し訳程度の数枚だ。
当然と言っちゃ当然だが、企画制作の奴のアイディアが採用された、なんとも茶番のような企画だったが…
「それが何か?」
「ちょっとその資料持ってきてくれない?」
にこっと笑った部長は、その表情の下に「どーせ今暇だろ?」という言葉を隠していた。
有無を言わさず渡された鍵。
笑いながら立ち去る部長。
この会社の性質上、資料の量は膨大だ。
ましてやある一時期の企画の資料を探すなんて、ファイリングした人物でなければ検討もつかない。
それを1人で探せという。
…最悪だ。
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