ある日の藤森さん

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「くっそ…どこだよ」 繁忙期が過ぎ去ってすぐなせいか、資料室には大量の書類が積み上げられていた。 これ本気で探そうとなるとかなり骨折れるぞ… 目当ての資料がありそうな棚に目星はつけたが、その棚にたどり着くまでに時間がかかる。 足を踏み出すだけで書類の山に阻まれてしまい、なかなか身動きが取れない。 「…これか」 ようやくファイルを見つけたのは資料室に入って15分後だった。 っつーか、こんな数枚しかねーんだからデータに誰かまとめとけよ。 パラパラめくると、本当に申し訳程度のイラストが申し訳なさそうに描かれている。 こんな企画、一生懸命やるやつの方が物好きだった。 見たことあったが、やっぱり全員手抜いてんな。 選出された企画のやつのだって、初めはかなり適当だった。それでも一番ましだったんだ。 ま、俺と部長とそいつで修正に修正を重ねてなんとか上を納得させたけど。 再びページをめくる。 「……っく」 最後のページ。 何度見ても慣れねーな。 「…何者だよ、お前」 ブサイクな猫が、俺を見て能天気に笑っていた。
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