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「あの穴はね、ここの神様が、神様でいられなくなった時にできたんだ」
「えっ」
「ここにはちゃんと神様はいたんだよ。この町には、東西南北の祠に奉っている神様とここ、合計で5体。だから、五神尊神社」
なんだそれ。
その時の私には、父の言葉がうまく理解できなかった。
神様が、神様でいられなくなるとはどういうことなのだろう。
もしかして、神様の世界にもリストラとかがあるのだろうか。
いや、それはいくらなんでもないだろう。
唇をとがらせて、うんうん唸ってみたが、これっぽっちもわからない。
「どういうこと?」
知らずに、眉間に皺がよっていたらしい私の眉間を指で抑えて、父は言った。
「神様は自ら神であることをやめたんだ。この町のためを思って」
「なんで?なにか悪いことをしたの?」
「そうだなぁ…」
「??」
父は私の最後の質問には答えてくれず、曖昧な返事をしただけだった。
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