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私は今年、中学に入学した。
この町には中学校が1校しかない。
昔、父が通っていた頃には2校あったらしいのだが、だんだんと生徒数が減少していき、校舎が老朽化してきたこともあり、校舎を新設すると共に2つの中学を統合したのだという。
その際に制服のデザインを一新しようという案もあったらしいのだが、昔ながらの地味な制服は今も健在である。
入学する前まで、自分がその制服を着て学校に通う姿など微塵も想像がつかなかった。
初めて制服に袖を通した時も、違和感しかなかった。
「リボンが紐タイプ…」
「文句言わないの。いいじゃない!お母さんは好きよ」
制服を買うために採寸に行った洋服屋で呟いた言葉に、母はすかさずフォローを入れた。
しかし、母の好みなどはっきり言って関係がない。
実際に着るのは私なのだ。
「今の子にはあまりウケが良くないかもしれませんね。この前来た子も可愛くないだの言ってたんですよ」
スカートの長さを見ていた店の店員さんは苦笑しながらそう言った。
男の子はどこの学校も学ランなんて似たようなもんで文句言わないんですけどねぇ、と話しながらもてきぱきと採寸を済ます様は、素直に感心する。
「そうよねぇ。昔は制服なんてどこも似たようなもんで、セーラー服か、こんな感じのブレザーだったもの」
「ねぇ。今じゃ色も形も色々あって!制服で志望校決める子もいるそうじゃないですか」
すっかり話が盛り上がっている、母と店員を目の端に捉えながら私はため息をついた。
全く話に加われそうにない。
母と出かけると毎回こうなるのだ。
話に花を咲かせるのは構わないのだが、私という存在を置いてけぼりにしないでほしい。
とはいえ、話を振られたとしても会話についていける気はしないが。
私は手持ち無沙汰に店の中を見回しながら母の会話が終わるのを待った。
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