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他人の心情を読み取れるということは、言葉による駆け引きというものを必要としない。
言葉による弁明よりも、表情や体の動作の方がずっと素直だと自分は知っている。
ならば必要最低限の会話があればいいではないかという、ひねくれた考えに至ってしまうのも仕方のない事だ。
よって、自分は他人より言葉数が少ないというのも自覚済みである。
これらのことから伺える自分の人物像は愛想のないつまらない人間で、達観した子供らしくない奴という事になるのだろう。
だが、人間というのは誰しも多面性を内包しているものだ。
好奇心旺盛な、行動派。
そう、自分を評した友人がいた。
小学校3年生の夏、友人の家の近くの畑に人魂が出たいう噂が流れた。
猫の目でも光って見えたのだろうと親は笑っていたが、私は自分の目で確かめなくては気がすまぬ性分である。
辺りが暗くなり始める頃、こっそり懐中電灯を持ちだして、「部屋でアニメを観る」と嘘をついては友人の家まで何日も通いつめ、二人で畑を見張った。
そのような時間に子供だけで外にいるというのはあまりいいことではなったのだろう。
友人はいつもそわそわして早く帰ろうと私の服を引っ張った。
確かあれは1週間ほど続けられた。
その期間で人魂に遭遇できなかったので、私は諦めるつもりはなかったのだが、部活帰りの高校生に私たちは発見されてしまい、親から厳重に注意され、監視下に置かれることとなったため、渋々断念せざるをえなかったのだ。
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