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夕焼けが見える神社の石段に父と二人、並んで座った。
話があると呼びつけたはいいが、どうやって穴の話を切り出していいのかわからずに、飛んできたトンボに手を伸ばしたりするのを父は黙って観ていてくれた。
それがなんだか申し訳ないような気がして、余計に話出しづらくなってしまったのだが。
「あー。逃げちゃった」
「お前はじっとしていられないからな」
昔からお前のお転婆には手を焼かされる、と私とよく似た目元を細めて笑われた。
自分はそんなにお転婆な子供だったろうか。
首をひねり、父の顔を見上げていると、頼むから夜中に出歩くなよ、と頭をなでられてしまい、少し反省した。
私としては純粋な好奇心からくる行動なのだが、どうやら少し度が過ぎているらしい。
あの時はひどく叱られたが、今となっては笑い話の種になっている。
肩の力が抜けて、ようやく話を切り出すことができた。
「神社に、穴があるよね?」
「穴…?どんなだ?」
「周りに縄が張られてた」
「あぁ…!よく見つけたなぁ」
父は最初、穴と聞いてしっくり来なかったようで、イノシシのいたずらか、と呟いて困ったような顔をした。
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