火に入る騎士

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太く伸びた枝に 姿があった。 『あ…れは違う…… 父さんじゃない……』 姿はあるが 顔が解らない。 枝に刺さっていた姿は 二つに別れ 肉の断面が下を向いていた。 胸部辺りから千切れた肉から 何かが垂れ下がっていた。 ゆらゆらと ゆらゆらと。 風に揺られている中身。 俺は青ざめガタガタと奥歯が鳴り体が震えた。 『っ! うっ…げほっ!』 無惨な姿に堪らず嘔吐した。 『ぐっ…ふぅっ…ぅぐっ…』 治まりかけた嗚咽を 再び漏らした。 …なぜ…僕だけ 生き残ってしまったのだろう。
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