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「なんとなく……?」
訝しげに目を細める。
「いやっ、あれはですね、物のはずみとゆーか
勢いで言っちゃったってゆーか……」
先輩は、立て膝をついた格好で、
私の狼狽ぶりを眺めている。
「僕がどれほど傷ついたか、お分かりですか?」
「またそんな大げさな……えっ?」
と思った時には、斜めに向けた顔が
鼻先を掠めるほどの距離まで近づいてきていた。
「なにかの形で、謝罪でもしていただかないと」
「げっ、ちょっ……まっ……」
私は咄嗟に、握っていたマーライオンを
先輩の唇に押し当てた。
「…………」
一瞬だけ、痛そうな表情を見せたものの……
それでもこの人は負けていなかった。
「マーライオンとキスをするのは
僕の趣味ではないんですがね?」
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