532人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしは大きく息を吸い込んで
先輩の顔をまっすぐに見た。
「でも、あの時は本当に腹が立ちました」
「………………。」
「確かに、有起哉と会ってたのに
嘘をついたことは、謝ります。
でもあなたが、想像していたような事実は
一切ありませんでした。本当です」
有起哉の気持ちは置いといて、
あくまでも主観的に話しを続ける。
先輩は黙ったまま、私の言葉に耳を傾けていた。
「だから、すごく悔しかった……
大事な友達を、そんな風に見られた事が……」
「……分かっていますよ」
柔らかな瞳が私の目に映った。
「そう分かっていたのに…………
自分を抑える事ができなかったんです。
頭で理解していても、心がついていかなかった。
……でも、これだけは覚えておいて下さい」
そっと、わたしの両腕を掴んで
静かに言葉を吐き出す。
「友情は確かに存在します……が、
どちらかがそうでなくなり、
相手に違う感情を抱いてしまったとしたら……」
…………しまったとしたら?
「それは…………その瞬間。
アワのように消えて無くなってしまうんです」
最初のコメントを投稿しよう!