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「…………………」 一瞬、言葉が出てこなかった。 …………この人は知っている。 有起哉の気持ちに気づいてる。 だから、こんなことを言ってるんだ。 なら、なおさら認めちゃいけない。 動揺がバレないよう、 慎重に声のトーンをおとした。 「……だとしても、私たちの間には あり得ない事です。絶対に」 「………………」 『頑張れ』と言ってくれた有起哉と そのプライドを守るためにも あえて、そう言いきるしかなかった。 1㍉たりとも視線を動かさず 先輩はじっと何かを考えている。 …………そして長い沈黙のあと 「……わかりました。その言葉を信じます」 と、少し緩んだ表情から苦笑いが漏れた。 違うと知りながら、それを承知の大人対応。 わたしは心のなかで、 ホッと安堵のため息をついていた。
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