17

3/9
前へ
/474ページ
次へ
テイクアウトのカレーを食べ終えて 一息ついた頃。 コーヒーをドリップし、 キッチンから戻ってきた私の目に映ったのは テーブルに置かれた小さな紙袋だった。 「出張先で買ったものです。 もっと早くに渡すつもりだったんですが……」 「出張?」 はい、と手渡されて、 不思議に思いながらもさっそく中を開けてみる。 出てきたものは、ライオンのような形をした 見覚えのある、小さな置物だった。 「マーライオンですよ」 「……確かシンガポールの?」 「ありきたりで、すみません」 上半身がライオンで、下半身が人魚。 シンガポールの象徴とも言える、伝説の生き物。 「シンガポールに行ってたんですか?」 ……いつの間に? 「ええ。急な出張でしたので、 戻り次第、連絡するつもりだったんですが」 「あ……」 その時はもう、携帯が繋がってなかった? 「す、すみません」 「いいんです。 どのみち、僕の方もバタバタしてて、 すぐに連絡できたわけではなかったので……」 一瞬、気まずい空気が流れていく……。
/474ページ

最初のコメントを投稿しよう!

532人が本棚に入れています
本棚に追加