532人が本棚に入れています
本棚に追加
テイクアウトのカレーを食べ終えて
一息ついた頃。
コーヒーをドリップし、
キッチンから戻ってきた私の目に映ったのは
テーブルに置かれた小さな紙袋だった。
「出張先で買ったものです。
もっと早くに渡すつもりだったんですが……」
「出張?」
はい、と手渡されて、
不思議に思いながらもさっそく中を開けてみる。
出てきたものは、ライオンのような形をした
見覚えのある、小さな置物だった。
「マーライオンですよ」
「……確かシンガポールの?」
「ありきたりで、すみません」
上半身がライオンで、下半身が人魚。
シンガポールの象徴とも言える、伝説の生き物。
「シンガポールに行ってたんですか?」
……いつの間に?
「ええ。急な出張でしたので、
戻り次第、連絡するつもりだったんですが」
「あ……」
その時はもう、携帯が繋がってなかった?
「す、すみません」
「いいんです。
どのみち、僕の方もバタバタしてて、
すぐに連絡できたわけではなかったので……」
一瞬、気まずい空気が流れていく……。
最初のコメントを投稿しよう!