プロローグ

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店員さん達ともすっかり顔見知り。 2人でじゃなくても、1人で度々来て同じ注文をするから、店員さん達は私達を見るなり「いつものですか?」と聞いてくれるようになった。 今日は店長…私達はマスターと呼んでる人が注文を取りに来てくれた。 「やぁ、光哉君に翠さん。今日もいつもので良いのかな?」 「こんにちは」 「こんにちは。いつものお願いします」 私達の返事に、マスターは「とっておきを淹れてあげるよ」とウィンクをして去って行った。 「それで、その本の事なんだけど。ドストエフスキーの罪と罰…だっけ?」 「ああ…」 マスターが去って行くと、さっきの途中になっていた会話を始めた。 今日もまた光哉が読んでいた本の話から始まる。 物語の概要、人物、ちょっとだけ話の内容を質問しながら聞いて行く。 そうこうしている間に、注文していたケーキとコーヒーのセットが目の前に置かれて、一旦話が止まる。 2人共、最初は必ずコーヒーを口にする。 「ココのコーヒー、相変わらず美味しい」 「そうだな。香りも良いし」 コーヒーと一緒にケーキに舌鼓を打ちながら、またポツリポツリと会話が混ざる。 それぞれの学校の事だったり、最近読んだ本、聞いた音楽の話。沢山沢山、ゆっくりと話す。 ケーキの甘さと、コーヒーのほろ苦さに包まれながら、私達の時間がゆっくりと流れるのだった。  
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