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玄関に入って靴を脱ぎ框に上がって、目の前にある階段を上がってすぐの自分の部屋に入る。
うわぁ、暑い…熱気がこもってる。即座にクーラーの電源を入れた。
ふと入って右手のベッドがある窓の方を見ると、光哉が部屋に入って来るのが見えた。
部屋まで隣同士って、嬉しいけど…ちょっと恥ずかしい。行動が筒抜けだし。
すると向こうも気付いたらしく、コッチを向いてヒラヒラと手を振ってくれた。
窓の方に近付いて、からりとそれを開ける。それを見て彼も自分の部屋の窓を開けてくれた。
「隣同士なのは嬉しいけど、これを言うと周りに「一緒に出掛ける必要無いじゃん!」って言われるんだよね」
「そうだな。常に一緒の状態と似たようなもんだし」
「窓を見るとアンタがいるんだもんね」
「俺も窓を見ると大体お前がいるんだよな」
まぁ、好い加減慣れたけどさ。と諦めたように光哉が言う。
そんなにアタシが近くに居るのが嫌ですか…なんてちょっとシュンとしてしまう。
「…お前が近くに居るのが嫌って訳じゃないぞ」
そのアタシの表情を見て心情を見透かしたかのように言う。
「!うん」
その一言で一発で機嫌が直る単純な自分が腹立たしい。
コンコン。と私の部屋の扉をノックする音が聞こえた。多分お母さんだ。
「!どうぞ」
私がそう言うと、扉を開けてお母さんが顔だけ出して来る。
「夕飯出来たから、下りておいで」
「はーい」
「!お、光哉君こんにちは。一緒に夕飯食べる?」
「あ、いや、俺の家ももうすぐだと思うんで」
私と光哉の親同士もご近所さんで仲良しだ。当然、光哉とも結構気安く話せる程度の付き合いはある。
しかも結構家の親は光哉を気に入っていたりもする。それと同じように、私も光哉の親には気に入られている。
「あら残念。じゃ、翠。早く来るのよ」
「了解でーす」
お母さんはそれだけ言うと部屋から出て行った。
「じゃあ、私言って来るね」
「ああ、俺も行く。じゃ、また後で」
「うん」
またね、と軽く手を振ってから窓とカーテンを閉める。
名残惜しく思いながら、部屋を後にした。
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