ソ ラ ハ ナ

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穏やかな顔で微笑を浮かべながら、直ぐ隣で盃を傾けている。 そのペースがいつもよりもほんの少し早いような気がしたが、青龍は特に何も言わなかった。 く、と干した盃に再び手酌で酒を注ぎ、同時に隣に座る男の盃にも注ぎ足してやると、一度きょとんと驚いたように瞳を瞠った後、ふわりとその目元を細め、ありがとう、とまた穏やかに微笑った。 青龍にとってはひどく見慣れたそのかお。 嗚呼そう言えば、この男はずっと昔から――初めて逢った時から、こんな風に微笑っていたなと、思った。 ◆◆◆ 自分を含めた『十二天将』の長となるべき人物だと。連れて来られたのは、何処からどう見ても子供以外の生き物には見えなかった。 年の頃なら七つか八つか――いずれにしても十に満たないことは確か。 整った顔は少女と見紛うばかりに秀麗で、まるでよく出来た人形のようだと思った。 じ、と言葉なく見下ろす青龍に、ご挨拶をと促されて納得したように一つ肯く。 さらりと柔らかそうな髪を小さく揺らして顔を上げ、真っ直ぐに青龍を見詰めて。 「貴人と申します。よろしくお願い致します」 そう、言って。穏やかな微笑を浮かべて、深く頭を下げた。――それが、青龍と貴人の出会いだった。 そしてその日から、青龍は貴人の教育係となった。……何故わざわざ自分が、とは思ったが、十二天将という括りとは言え未だ十二全ては揃っていないし、中でも青龍は誰より長い年月を生きている。 この国の伝説も歴史も多くを見てきている。 尤も、興味のあること以外はさっさと忘れてしまうことにしているので、凡そ全てを詳らかに理解しているとは言い難いが。……忘れてしまわなければ、処理出来ない程の情報を目にして生きて来ているのだから、それはそれで当たり前のことである。 それらのことを説明した上で、それでもと言われれば、青龍としては否とも言えない。 ――いや、本当に嫌なのであれば、断ることは出来ただろう。が、青龍はそれをしなかった。つまり、青龍は少なからず目の前の貴人のことに、興味が引かれたのだ。
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