【檻姫~オリヒメ~】

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私の世界は、真っ暗な闇。 その中に、匂いと音を感じるだけ。 あの日から… 私の目に光が写ることはない。 一キィー… ドアの開く音。 徐々に近付いて来る足音に、私は身体を起こした。 あの人が、帰って来る。 一ガチャ 匡「ただいま、沙夜。」 沙「お帰りなさい。」 私の頬を撫でる腕に、ギュッと抱きついた。 沙「雨の匂い…」 微かに彼の身体からする。 匡「ああ、さっき雨が降ったからね。お陰で少し濡れた。」 沙「フフッ…そう…」 外の世界のことは、全て彼が教えてくれる。 私には、それしか知る術がないから。 匡「さぁ、今日も包帯を取り替えようか。」 沙「うん。」 私の目に巻かれた包帯を、彼がゆっくりとほどいていく。 そして丁寧に新しい包帯を巻き直した。 匡「ごめんな…」 包帯を巻き直す時、彼は決まって私に謝る。 それは二年前、私が彼をかばって事故にあったから。 その後遺症で、私の目は二度と光をさすことはない。 沙「謝らないでよ。」 貴方は悪くない。 あの時、私が勝手に飛び出したんだもの。 匡「沙夜…」 沙「ん?」 匡「好きだよ。」 沙「……うん。」 .
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