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沙「ねぇ匡…私、外に出たい。」
最近、沙夜はやたら同じことを言うようになった。
それもそうか…
この部屋に連れて来たばかりの頃は、外へ散歩にも連れて行ってたけど
最近じゃ外どころか、庭にも出してない。
息が詰まるのも当たり前か。
でも駄目だ。
いくら沙夜がお願いしたって、外になんか出してあげないよ。
君の姿を誰にも見せたくないから。
「社長、何故沙夜様に本当のことを言わないのですか?」
匡「本当のことって?」
秘書の言葉を聞き流しながらパソコンに目を向ける。
この秘書は沙夜が俺以外で唯一関わる存在。
と言っても、俺が仕事で忙しい時に沙夜のご飯を持って行くだけの関係だけど。
「沙夜様の目のことです。手術をすれば治ると、何故教えて差し上げないのです?」
匡「………。」
「社長…」
匡「必要ないだろ。」
光なんて…沙夜には必要ない。
俺と共に、あの部屋で一生暮らすんだから。
沙夜が側にいてくれれば、俺は何もいらない。
だから沙夜…
君の全ても俺にちょうだい。
その目に写る光も…
君の心も、俺のこと以外何も考えないで。
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