第三歩

2/14
前へ
/64ページ
次へ
「もう日が暮れるね。では……えっと」 「ああ、梶原です」 あれから数分。 私がお先真っ暗なこれからを案じている間に、この人は、甘味の事しか言ってなかった。 (甘味馬鹿………) 平成で言うオトメンですか。 「じゃあ、梶原君。家まで送ってあげるよ」 「あ、あの。そのことなんですが…………私、勘当されて家に帰れないんです」 「勘当されて、家に帰れない!?」 「は、はい。お恥ずかしいことに」 先程の時間に考えた、家に帰れない理由を言うと、青年は驚いた風に目を見開いた。 「じゃあ、その珍妙な格好もそれに関係が?」 「ええ。ちょっと色々ありまして……」 (ちょっとどころか、大変色々あったんですけどね) 真っ赤な嘘に心が痛むが、タイムスリップしましたなんて言えば疑われるだけ。 それならいっそ、勘当されて行き場所がない子供を演じた方がましだ。 (まあ、タイムスリップの事を説明するのが面倒臭いだけですけど) 因みに、割合は前者31%、後者68%です。 あ、残り1%は、もちろん罪悪感ですよ。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加