第三歩

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まさか私に帰る家がないとは考えもしなかったのだろう。 思案顔で六畳半の部屋を忙しなくいったり来たりしている。 予想通りといえば予想通りの反応。 まあ、直ぐに追い出されなかっただけまだましだろう。 (なんとか粘れば、今夜は野宿しなくてもすむかもしれない) だが、その後はどうするか。 このままこの時代に居るのはお断りだ。 なるべく早く平成に帰らなくては。 (だけど、どうやって……?) ぱんっ! いきなり響いた小気味良い柏手にビックリして、俯けていた顔を上げる。 「そうだ!! 梶原君、君は何処かに行く宛ないんでしょ?」 「ええ、そうですが」 新しい悪戯を思い付いた様な微笑みを浮かべて、青年が私の肩をがしりと掴んだ。 「君、僕の小姓になってよ!」 「…………はい? 小姓、ですか?」 「うん! そしたら働き口も出来るし、寝食も困らないでしょ?」 な、何て言いました? この人。 『働き口も寝食も困らない』!? 何処の大バーゲンセールですかっ!
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