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まさか私に帰る家がないとは考えもしなかったのだろう。
思案顔で六畳半の部屋を忙しなくいったり来たりしている。
予想通りといえば予想通りの反応。
まあ、直ぐに追い出されなかっただけまだましだろう。
(なんとか粘れば、今夜は野宿しなくてもすむかもしれない)
だが、その後はどうするか。
このままこの時代に居るのはお断りだ。
なるべく早く平成に帰らなくては。
(だけど、どうやって……?)
ぱんっ!
いきなり響いた小気味良い柏手にビックリして、俯けていた顔を上げる。
「そうだ!! 梶原君、君は何処かに行く宛ないんでしょ?」
「ええ、そうですが」
新しい悪戯を思い付いた様な微笑みを浮かべて、青年が私の肩をがしりと掴んだ。
「君、僕の小姓になってよ!」
「…………はい? 小姓、ですか?」
「うん! そしたら働き口も出来るし、寝食も困らないでしょ?」
な、何て言いました? この人。
『働き口も寝食も困らない』!?
何処の大バーゲンセールですかっ!
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