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ガキンッ!!!!
金属と金属が、ぶつかり合う音がした。
「嫌だなぁ。今日は非番なのに……」
この場にそぐわない朗らかで、何処か飄々とした声。
「空気を読んでくださいよねっ」
「がッ!?」
まさに、電光石火の速業。
いきなり乱入してきた青年は、男の右腕を切り付け、男が怯んだ所を逃さず胸を一息に突いた。
グジュ。
肉を裂く音。
血が滴り落ちる音
「……ぇ?」
目まぐるしく変わった状況に心がついていけない。
ただ分かったのは、あの刀は本物で、それを使ってあの青年は浪人を殺した事だけだった。
「あ、そっち終わりました?」
「ああ。助太刀、感謝する」
「一君に借りなんて、滅多に作れませんからね~」
人を殺したというのに朗らかな声がは変わらずに、仲間らしき人物と喋り始める。
むせ変える程の鉄の臭いに当てられて、フラりと体が揺れた。
(気持ち悪い……)
ヘタリとその場に座り込み、もわんもわんと鈍い痛みが広がる頭を両手で支える。
(暗闇に落ちていく感覚というのは、こんな感覚なのですね)
薄れゆく意識の中で、ふと月名は思った。
此処は本当に何処なのでしょうか。
……と。
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