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その上、基礎をアレンジした鍵詞を使う輩も居る。その域に達すればエチュードにもなれるのだが彼にはそれができない。明かりを点すのに使う鍵詞は、学校で教えられた基礎だった。
「……アップ」
ぽつりと呟いても掌に明かりは浮かばない。
「らいと!」
声を張っても悲しい現実があるだけでなんの反応もない。
「…ライトアップ」
結局、遣い慣れた鍵詞を唱えて、ひとつ光が誕生するのだ。
手順としては、頭に光球を思い浮かべるだけだと教わった。
それで理解できた生徒は少なく、アクスもそのひとりだった。
エチュードの素質がある同級生は瞬く間に飛び級し、政府や医療などで活躍した。
アクスにしてみれば、種術を使うより剣術を習得した方が楽しかった。部活も日常も剣術にあけくれたのだ。そのおかげか、剣術大会に出る腕前にはなった。しかし、種術となると最早、最下位だ。水不足に水を作れなかったときの屈辱は今でも忘れていない。それから奮起した彼は、基礎として宛がわれた鍵詞を猛特訓したのだ。やっとランク上位に属する風を覚えたのは二十歳を過ぎてのことだ。一般としては遅すぎる部類であった。それも、女のスカートをめくるくらいの威力だったことを今でも覚えている。
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