第一章 アーティスト

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 ラッドサンド大陸に於いて、一般的に種術を扱う市民をアーティストと呼んでいる。  わかりやすくいうと、魔法使いの最下層に属する人々のことをいう。  彼等は、火を操り、水を湧かせ、ときに風を起こして風車を回し、力を生活の基盤として扱うことができる。  種術の基礎基本は学校か親から習う。  大陸に生まれた子供は必ず学校に通うことにる。  そこで、アーティスト及び無音種師までの階級を得ることになる。  一般家庭に生まれ、平凡な生活をしてきたアクス・ブロンドは、種術を使うよりも剣技を上達させた。また、彼は特技として暗算をマスターしている。そのかいあって納税局に勤めることができた。  種術を使わなくとも普通の生活ができる半面で専門的に突出した分野がない。それが、一般種師と呼ばれるアーティストの存在だった。  アクスは、現在、監獄島第一等星警備警察事務所に所属する。  主な仕事が金銭管理のためか、周りには会計長と呼ばれていた。  アクスは、資料をまとめる手を止めた。壁に飾られた時計を眺めると夕方四時であった。普通の勤務地ならば五時には帰れる。店を開いているならば、その日に合わせて休むことも可能だ。アーティストなどと小賢しい呼び名を得ているが、それが、一般市民のごくごく当たり前の生活なのだ。
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