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「これ…この着物は乃愛ちゃんに似合いそう!どお?」
「え…と…着なれないから…でも椿さんがそう言うんだったらそれを着ます」
「うん、可愛いと思う、絶対!!」
幕末に着いた後のバスの中、二人は着物に着替えていた。
「………ん?」
椿は、器用に髪を結う乃愛に目を奪われた。
「あ…私、美容師なんです」
椿の視線に気が付いた乃愛は、照れたように笑う。
そして、あまり上手く結えていない椿の髪を、きれいに仕上げた。
それから…
バスを降りると、そこは夜の幕末だった。
歩き慣れない乃愛の歩調に会わせながら、椿は屯所を目指した。
と…その時だった。
椿は不意に足を止める。
はたしてこのまま乃愛を屯所に招き入れても良いのだろうか…
そう思ったのだ。
勝手に屯所に入れて、自分が土方に怒られるくらいなら構わないのだが、乃愛をトラブルに巻き込むような事になっては大変だ。
椿のように、山崎の妹という肩書きがあっても(幕末奇行参照)安全とは言い切れない。
「どうしよう…」
「どうしたんですか?」
街灯など勿論ない、月明かりしかない通りで女二人…
乃愛は不安に顔を歪めた。
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