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憎悪を込めた瞳で、本棚に並ぶ背表紙を順に追っていく。
彼女はその中から、角が擦れた焦げ茶色の本に指をかけた。それはルイス・キャロルの不思議の国のアリス。
色褪せた紙をめくると、ぱらりと乾いた音がした。その音と質感に少しだけ心が和らぎながら、彼女はパラパラとページをめくる。
すると数十ページ目に、淡い黄色のカードが挟まれていた。
懐かしい走り書きの文字を、彼女はまた泣きそうになりながら音にした。
「アリス…―革命者―………」
一度呟いた後も、彼女はその言葉を自分に言い聞かせるように何度も何度も繰り返す。
気付けば、壁に掛けられている振り子時計が正午を告げていた。
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