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「ふわぁっ…」
大きな欠伸を漏らしながら、まだ気だるい体を伸ばす。
「…ちょっと寝過ぎたかな…」
藩邸内が少し騒がしい。
きっと、朝餉の時間なのだろう。
軽く軟禁状態の私は、この部屋で食事を取ることになっている。
そろそろ女中さん辺りが朝餉を持ってきてくれるだろう。
私は布団から抜け出し、寝間着から着物へと着替える。
綺麗な刺繍が施された着物は、安くはないだろう。
…軟禁以外では、私はとても優遇されていると思う。
まぁ、それを良く思っていない者も多く、それ故に私を藩邸から追い出したいのだろう。
厠やお風呂に行くために部屋から出れば、私に向けられるのは好奇か嫌悪。
…今さらこんなことを気にする様な私でもないのだが、やっぱり気分の良いものではないのも確かだ。
かといって、簡単に信頼するのもどうかと思うが。
………例えば、新撰組…とか。
その名が無意識に浮かんできたことに、私は失笑した。
私はどれだけ感化されているのだろう、と。
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