姫と騎士

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「まず、私達の魔術から話しましょうか。私達は、二人一組でないと魔法が使えません。それは、魔法の源としてしか存在できない騎士と、魔法の制御としてしか存在できない姫、もしくは王子。その二人が揃ってはじめて、魔術を発動できるのです」  姫、もしくは王子は、魔術を発動するには圧倒的に魔力が足りない。それを補うために騎士と組み、その魔力を制御する。  騎士は、魔術を制御するには魔力がありすぎる。暴走してしまう魔術を抑えるために姫、もしくは王子と組み、その魔術を完成させる。 「二人でなければ魔術を発動させられない。魔女騎士先輩は、その絶対の理を呑みこんでなお、戦い続ける人でした」  高等部会に所属して数年してから始まる、戦場演習。その中で真っ赤になった魔女騎士先輩を知っている。 「あの方は魔術を乗せた拳で戦い、自らが傷ついても戦い続け、癒されたその身すら傷つけ、それでも生きて帰ってくる方でした」 「俺のような騎士達は、あの人が戦場に出ていることに士気が上がり、あの人を傷つけないように奮戦し、自らの姫や戦友、そして魔女騎士と帰るためだけに、自らの力を解放した。といっても、姫や王子を守るのが最優先だから、前線に出ない者もいたが」 「戦争を終えて、彼女は……」 「帰ってこなかった」 「アルト!!」  帰ってこなかったことを言葉にすることを学園の生徒が嫌うのは、魔女騎士先輩が死んだと思いたくないからだ。 「帰ってこなかったからとして、すぐに死んだに繋がることは無いだろう」 「そのことを話したがらないことを知っていて話すのかと言っているのよ!……それに、先輩は、死んでしまったわけがないわ……!」 「だからこそだ。………魔女騎士先輩を見つけた時に、伝えて欲しい」  男に向かって告げるアルトの周りにあった風の刃は、無くなっている。私が再び出そうとしても出ないということは、魔力を完全に抑えているのだろう。 「学園で、待っていると。どんな事情があって帰ってこないかはわからないが、一度だけでいいから、後輩たちに、姿を見せてほしい、と」 「……必ず」  男とアルトの間で交わされた会話に、入り込む余地は無かった。  それが悔しくて悔しくて、悲しくて。 「スティア!?」  衝動のまま、踵を返して走りだしていた。
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