姫と騎士

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「スティア」 「なによ」  拗ねた口調の片割れに苦笑する。 「すまなかった」 「謝られる理由なんてないわよ」  地面にしゃがみ込んで膝を抱えている片割れは、俺の大切な姫だ。 「勝手に約束したことだ。……せめて一言だけでも言うべきだった」  謝ってもこちらを向かない。ならば、実力行使だろう。 「話すときはこちらを向けと、お前が俺に教えたんだろう?」  細い体を抱き上げて、俺の方に顔を向ける。涙に濡れた頬を撫でれば、弱弱しい拳で胸を殴られた。 「あの人が死んだわけがないわ……!」 「うん」 「帰ってこなくても、どこかで生きているのよっ!きっと、きっとあの人は……!」 「うん。生きてて、きっと、笑ってる」  そっと抱き寄せて背中を撫でる。細い背はしゃくりあげるのを必死に耐えているのが分かる。 「会いたいな、あの人に」  俺達の目標だったあの人に。俺達を、会わせてくれた彼女に。  そう、それは、俺達が入学して初めての夏だった。  異常なほどに暑くなり、熱中症になりそうた昼だった。
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