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「どうした、頭痛か?」
廊下にうずくまる少女を、銀の髪を高い位置で結った少女が抱き上げる。
「ああ、これは……少しやばいな。そこの少年、手伝ってくれないか。保険医が所用で出かけているんだ。処置は分かるが、手が足りなくてさ」
近くにいた少年に声をかけ、銀の少女が歩き出す。少年は、戸惑いつつも少女たちに着いて歩きはじめた。
「氷水とタオルを用意してくれ」
「そいつ、誰か知ってるのか?」
「知らないけどね。目の前で苦しんでるんだ。助けたいじゃないか」
穏やかに言いながらも銀の少女は魔法で塩を作り出す。
「ほらほら、時間が惜しい、急ぎなよ、少年」
少年が違和感に気づくまえに急かした少女は、作りだした塩水を運んできた少女の口に含ませる。
「飲めるかい?少しだけでも飲んでくれないと、君は死んでしまうよ」
「氷水、持ってきた」
「ありがとう、そこに置いておいてくれ」
「そいつは……」
「大丈夫。あとは冷やして、ゆっくり休めば目を覚ますよ」
恐る恐るというように近寄る少年に、銀の少女は手を伸ばす。
「怖がらないで平気だよ。放っておけば死んでしまったけれど、もう彼女のそばに死神はいない」
「見えるのか?」
「いや?」
掴み切れない笑みと共に否定されて気が抜けたような顔をする少年は、ため息をついて寝台に眠る少女を見る。
「こいつ、魔術を使えないやつだって、噂になってる」
「魔力が無いってことかな?」
「弱すぎる、って」
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