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姫と騎士
「美しい銀の髪と、宝石のような赤か青の瞳を持ったひとを知らないか?」
頬に大きな傷跡を抱え、顔に多くのしわを抱えた男に声をかけられて、自制する間もなく顔をしかめてしまった。
「なぜ、そのひとを探しているんです?」
銀の髪と宝石のような瞳は、すぐに敬愛する先輩の姿へと変わる。
「………理由を、言うわけにはいかない」
「ならば答えることはできません。あの方たちは、私達の大切な方ですから」
「まあ、そう邪険にすることも無いだろ。話してやればいいんじゃないか?」
言われた言葉に眉を寄せて相方を見上げた。私も女としては長身な方だけれど、男で、しかもガタイのいい相方は見あげないと顔が見れない。
「あの人の話なんて、めったにできないんだ。好きなように話せばいいだろ。時間が押してるわけでも無し」
「アルト!理由を言えないような相手にあの人のことを話せというの!?」
「言えないのにも理由はあるんだろう。……それすらいえないのかも知れないが」
ゆるりと重心を変えたアルトに、内心で魔法を使うことを決意する。
「あの方を傷つけるつもりなら、容赦はしないわ」
真偽を確かめる魔法を男にかけると共に、アルトの周囲を取り巻く魔力を風の刃へと変化させる。
「……傷つけるつもりは、無い」
真偽判定の結果は、真。ならば男が傷つけることは無いのだろう。
「なぜあの方を探すのか、話せないのね?」
「そうだ。……その理由も、話せない」
再びの真。
「………わかったわ。あの方のことを話しましょう。あの方は……魔女騎士先輩は、私達の憧れであり、目標だったわ」
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