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詳しいことは、ほとんど聞かされていない。
聞かされているのは、和の国遊びで優勝すれば、一生豪遊できる金額の賞金がでるということだけ。
でも、よっぽどバカでない限り、そんな遊びに参加するやつはいないだろう。
あたしは身体検査をすまし、荷物を持って列に続く。
「る~りっ!」
「わっ・・」
急に声をかけられたもんだから、カバンを取り落としてしまった。
「あ~ごめんごめん。びっくりした?・・・まぁ、びっくりさせるつもりだったんだけど」
彼女はボブの黒髪を揺らして、ニヤリと笑う。
あたしより頭一つ分小さいこの女の子は、檎谷 凛 (ごたに りん)。
中学からの仲であたしの親友。
頭はとても良いんだけど、誰に対しても超毒舌。
よってあだ名は毒林檎。
別に、嫌われ者でこういうあだ名になったわけではなく、むしろクラスの愛されキャラ。
「どうしたの、死んだ魚みたいな顔して。カバン拾わなくていーの?」
「失礼なっ!死んだ魚みたいな顔なんてしてないし!言われなくとも拾います~っ」
あたしが荒々しくカバンに手を伸ばした、その時。
ドンッと何かに衝突されて、尻餅をついてしまった。
「ったぁ~・・・」
何か言ってやろうと思って後ろを見ると、空港の警備員らしき男の人があたしと同じように床に尻餅をついていた。
床には銀のスーツケースと、10センチ四方の黒色の小包が15個ほど散らばっていた。
「ちょっと警備員さん!危ないじゃないですか!」
凛は仁王立ちで、あたしにぶつかってきた警備員を見下ろす。
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